子供の人間関係回復力(校長だよりNo48)

心の温かさ,というものを見失わないようにしてゆけば,

大きく判断を誤ることは少ないと思う。

誰にしろ,人を憎んだり,

痛めつけようとそそのかすものの言うことは警戒した方がいい。

   <佐藤忠男 「大人になるということ」>

*人を見下して,自分中心にふるまうことを傲慢といいます。残念なことに人間は知らず知らずのうちに傲慢な態度をとってしまうことがあるようです。自分では,自分自身はかわいい存在であるので仕方のないことかもしれません。でも,傲慢というのは美しい姿ではありません。

 

*私自身も含め,他人の悪口を言ったか,言わなかったか,こうしたことを時々点検することが必要かもれません。楽しいはずの小学校生活の中で,ましてや教室の中で,小さな胸を痛めている子がいるかもしれないからです。

 

*高学年を担任しているころ,授業でよくアンケートをとっていました。設問はたったの2つです。

 (1)自分がこれまで友達にされていやだなぁと思ったこと

 (2)友達に対して「悪かったなぁ」「意地悪しちゃったなぁ」と思えること

これらを思いつくだけたくさん書かかせたのですが,スラスラと鉛筆が進む子もいれば,配られた紙としばらくにらめっこを続ける子がいたことを思い出します。

 

*授業では「(1)で書かれた数と(2)で書かれた数,多い方はどちらだと思いますか」と聞いています。クラスの5~6人が「(1)と(2)の数は同じ」と考え,別の5~6人は「(1)の方が多い」と考え,残りの15人ほどは「(2)の方が多い」と予想しました。

 

*高学年のクラスを持つと時折こうした点検(!)とも言えるアンケートをとることがよくありました。物理的には(1)と(2)の数は一致するはずですが,実際にはそうならないことが経験上多く見られます。お家の方はどちらの数が多いと思いますか?

 

*私が担任したクラスでは(2)より(1)の方が多く書かれます。

そして,毎回その差は圧倒的です。

この結果から分かるのは「嫌なことをされた記憶は,強く残るんだなぁ」ということです。

 

*子供とはいえ(いや,子供だからこそ?)小さなトラブルはつきものです。

担任には子供同士のトラブルに上手に介入してもらいたいと思っています。

学校でいざこざがあっとしても最終的には,「ゴメンね」「いいよ」といえる,『おたがいさま』の関係にもどれることが麗しいと思っています。

そして,友達にたいして「悪かったなぁ」「意地悪しちゃったなぁ」ということについては,

過去と他人は変えられないが,未来と自分は変えられる』

の言葉のように,これから先どうするのか,どうしたいのか,どうするのがよいと思うのか,自分自身の魂を磨く機会にさせたいと思います。

 

*ところで,子供の人間関係回復力(!)は,大人とはくらべられないくらいすごいものです。

さっきまで悪口の応酬だった2人が,帰る頃には肩を並べて歩く姿を目にすることも少なく有りません。

どうぞ,子供同士のトラブルについては,まずは学校に任せてもらえると有り難いです。