よりよい自己イメージを描く(校長だよりNo36)

*梅干しを見た瞬間から,酸っぱさが口の中に広がっていきます。

飛行機に乗って激しく揺れはじめると墜落を想像します。

少なからず私たちは今までの体験から様々な枠組みをセットしています。

どういうセットがされているかが問題です。

*古い話で恐縮ですが,大相撲についてNHKニュースで紹介されたのは「白鵬関が再び稀勢の里関に敗れる」というものでした。奇しくも64連勝を止めた相手に再び横綱が屈したのですから話題になるのも頷けます。TVでは白鵬関は前日,先場所稀勢の里関に負けた一番をビデオで繰り返し,繰り返し見て研究したと報じていました。

 

*これまた古い話ですが,プロ野球の日本シリーズで西武と広島が対戦した年がありました。

その第1戦は,11対3で西武が圧勝しました。広島カープの大事な初戦の先発は当時のエース佐々岡でした。そのシーズン,セリーグの最多勝・防御率ナンバーワンのピッチャーです。日本シリーズは,先に4勝すれば優勝という短期決戦ですから,当然広島は佐々岡を中心にして投手のローテーションを組んできます。

西武ライオンズとすれば,この佐々岡を徹底して打ち崩せば,おのずと楽な戦いになるはずです。

 

*翌日の新聞には『たった61球,初陣に涙』というタイトルで,秋山・清原・デストラーデにそれぞれホームランされた試合の模様が解説してありました。

  ~力みから球が高めに浮き,制球も定まらないまま,リズムに乗る前に打たれた~ 

そして興味深いのは

~佐々岡投手の投球をビデオで徹底研究。それも佐々岡が打たれるところだけを見せて臨んだ西武打線~ とあったところです。

「相手ピッチャーをビデオで何度も見る」これは高校野球でもやっているいわば常識的なことですが,佐々岡投手が打たれる場面だけを選手に徹底的に見せた,というところにわずか3回で降板という布石があったのではないかと思います。

バッタバッタと三振を取っている姿ではなく,投げれば打たれるという佐々岡投手のビデオをみた西武ナインはイメージの世界の中で『たいしたことない』という確信を持ったことでしょう。

 

*梅干しを見た瞬間から,酸っぱさが口の中に広がっていきます。

飛行機に乗って激しく揺れはじめると墜落を想像します。

少なからず私たちは今までの体験から様々な枠組みをセットしています。

どういうセットがされているかが問題です。

スポーツの世界で強豪と呼ばれるようなチームは当然ながら負けた体験よりも勝った体験が圧倒的に多く,試合をすれば勝つという情景がセットされています。勝ち癖はますますチームを強めます。好打者といえども,7割はアウトになっています。しかし,3割の成功体験でセットされ,失敗の方はすぐに忘れているのではないでしょうか。

 

*相撲素人がどうこう言えることではありませんが,もし稀勢の里関に快勝したシーンだけを白鵬関が見ていたとしたらそのときの勝負の行方はどうなっていたのでしょうか。

勝負事に「もし」や「たら」「れば」はありませんが,ちょっと興味深いことだと思いませんか。

 

*双葉東小では子供たちの自尊感情を高めることが大切だと考えています。「よりよい自己イメージを描く」ためにはどんな体験を仕組み,どんな心持ちをセットさせるか,ちょっとヒントがあるような気がしました。