脳と指先の関係(校長だよりNo41)

 

*本の受け入りで恐縮ですが興味深い内容だったので紹介します。

 

*ある大学の研究室で子供の握力を調査しました。

精神がどのように技能に影響を及ぼすかを調べるために,検査方法を次の三種類にしました。

 第一の方法は,握力計を手で握ればよいことを教師が丁寧に説明してやらせる

 第二の方法は,丁寧に説明した後で,教師が頑張るように声をかける

 第三の方法は,説明した後にかけ声をかけ,かつクラス中の子供達が声援している中でやる

この3つの方法を幼稚園児,低学年児,高学年児の3つのグループにやらせたところ,その結果顕著な違いが出たそうですがどんな結果が出たと思いますか。

 

*多くの人は

「小さい子の方が声援されると興奮するでしょう。必死になってやるでしょう。高学年になると多少は興奮するでしょうけど幼稚園の子供ほどではないでしょう。だから第三の方法で,みんなに声援されながら幼稚園の子供がやった時が,反応が大きいのでは・・・・」

かなりの数の人がこのように答えたそうです。僕もそう思えました。実際,大学の研究室でも,これと同じ予測をしていたそうです。

 

*しかし,結果は全く違っていました。小さい子はどの方法でやっても結果は同じだったのです。

みんなに声援されながらやると確かに顔を真っ赤にして周りの期待に応える為に必死に力を入れるのですが,結果は同じで変化はしなかったのです。大きい子の場合は,小さい子の時ほど興奮はしません。にもかかわらず,声援の中でやると,静かな時に比べて,握力計メーターの数値は上がったというのです。

*大人の予測を全く裏切ったこの事実の原因は一体何なのでしょうか。

一年生の子供達に,給食をはやく食べさせようとして「はやく食べなさい」と,何度もせき立てても結果は同じだそうです。せき立てたり,怒鳴ったりすると,口の中にたくさんほおばったりしてはやくしようとはしますが結果は同じだそうです。

*この事実の原因は脳で命令したことが,指先の技能として伝わるまでには何年もの成長の過程が必要であると言うことです。

同じ一人の人間の体の中で脳から指先までの1メートル足らずの間には,途方もない<成長の年月>が存在しているわけです。このことは,子育ての上での大切な問題を投げかけてくれています。

「しつけ」は家庭教育の根幹であり大切なもの,選び抜いたものを丁寧に教えなければなりません。しかし,あれもこれもと手を出したり,先を急ぎすぎたりするあまり「しつけ」が「おしつけ」にならないように注意することが大切だというのです。

「まるでやらない」のも「やり過ぎる」のも害が大きいのです。多いことが,急ぐことが,決していいことではないのですね。