大いなる経験と小さな失敗を(校長だよりNo18)

*夏休みに入ります。

月並みな言葉ですが「心身ともに健康で有意義な日々を!」と願います。

子供の頃,夏休み最終日にはいつも「あ~,明日から夏休みだったら良いのに・・・・」と毎年毎年考えていたものです。それと似たような話ですが若い頃,2学期の始業式の後に「あ~早く冬休みにならないかなぁ。」とつぶやいていた先輩教師がいました。近くで聞いていて思わず笑ってしまいました。

双葉東小の子供たちには,そんな後ろ向きの想い(!)で2学期を迎えて欲しくないものです。

 

*さて,夏休みにはよく「長い休みでしかできないような体験を!」というスローガンが掲げられます。子供たちにはこのスローガンのようにさまざまな体験をしてほしいと思います。

「長い休み」とは直接にはつながらないかもしれませんが,その体験の一つにこんな体験(経験)も入れてもらえると良いのになぁということがあります。

それは「失敗をする」という経験です。(もちろん,命に関わるような大きな失敗ではありませんよ)

 

*これまで担任してきた子供たち(6年生であっても,いやむしろ,高学年ほど・・・?)の多くは「負けること」「失敗すること」を嫌ったものでした。時代は変わってもこうした傾向は変わってないように思います。

例えば,授業中,問題を解いているときに自分の書いたことが間違いだと気づくとそれこそ「跡形もなく消しゴムで消す」という子が多くいます。子どもたちは,ややすると授業で「間違い」をすることは良くないことと考えている節があります。間違いや失敗することを極端に恐れて身動きが取れなくなるといったことも時にありますが,こうしたことが原因かもしれません。

 

*教師の中には,消しゴムは「文字の書き間違いなど必要最低限の時のみ使う」よう指導しているものもいます。子どもたちにはノートの間違いは,宝物だから残すようにと指導しています。

大きな失敗をしないためにも小さな失敗はたくさん積み重ねるべきだと思っています。

 

 (前略)たとえ、親よりも苦労することがあっても、親よりもたくましく、親よりも粘り強く、人生を生き抜いてゆく力と知恵とを子どもに与えておく、それが一番正しい親の愛情であり、義務であると私は思います。そのためにはどうしたらいいか。結論から先に言います。負ける練習、恥をさらす訓練、カッコの悪い体験を、できるだけ多く子どもにさせておくことです。人間の体は使ったところが強くなります。これは至極簡単な原理です。その反対、使わぬところはどんどん弱くなります。

現代っ子にとって一番弱いところはどこか?負けに耐える心、恥に耐える心、カッコ悪さに耐える心です。(後略)                                      相田みつを

 

*1994年、ノーベル文学賞を受賞した大江健三郎さんは、同年上智大学で行われた国際家族年記念講演の締めくくりでこう述べています。

家庭とは、本当にわたしたちが安心して失敗のできる場所。

失敗してもそれで迷惑をかけた相手に憎まれないというか、そのうえであらためてお互いに和解し合うことのできる場所、

その基本的なモデルです。

 

*休み中,多くのことは御家庭に委ねるわけですが,どうぞよろしくお願いします。

明日へとつながる大いなる経験と小さな失敗を十分にさせてあげてください。