理想の指導者(校長だよりNo7)

『理想の指導者とは,どうあるべきか,組織はどうあるべきか』

を考えるときに,北海道の中学教師がまとめたこの話は,いつまでも色あせない内容として私の心に残っています。

*学校の在り方が問われ,保護者の方から,教師への要求やクレームが増えた頃,その先生は考えました。

「こんなに一生懸命仕事をしているのに,なぜこんなに責められるのだろうか。」

そこで,世間が求める理想の教師・指導者とは何であるのかを調べたというのです。

はじめに手がけたのは,逆の発想なのですが「教師に対する批判内容」をとにかく調べるということでした。

批判内容として相反するものを探ることで、理想の指導者にとって大切なものが何であるのかのヒントが得られるのでは,と考えたわけです。

そこでインターネットで『教師』『不祥事』といったキーワードを検索,大量にヒットした内容を丁寧に分析したといいます。

 

*その先生は,調べたことをまとめ,理想の指導者像をピラミッドに表しました。

ピラミッドは大きく3段になっていますが,一番下の段,つまり,ピラミッドの土台として描かれたのは『生活力・モラル』でした。なるほどです。

 

*3段あるピラミッドの中段は左右に分かれています。

右が『事務力』,左が『指導力』

事務力は「教務力・研究力・緻密性」から成り立ちます。

私が苦手な部分です。

指導力は「父性型・母性型・友人型」から成り立ちます。これはタイプが分かれるところでしょう。

それぞれ詳しく説明すると

 「父性型は,規範を率先して実行できる力」

 「母性型は,優しく包み込む力」

 「友人型は,子供と対等につきあえる力」だそうです。

 

*そしてピラミッドのトップに位置するのが『創造性・先見性』です。

 

*さて,指導力の父性型・母性型・友人型を考えたときに、私自身は父性型だと思っています。

子供に癒しを与えるA先生は母性型だろうし,子供とフランクにつきあえるB先生は紛れもなく友人型であると言えます。お子さんの担任は何タイプでしょうかね。

 

*本題に戻します。

実は,作者である先生は,これらの分析結果を見て唖然としてしまいます。

規範を率先して実行する父性型,優しく包み込む母性型,子供と対等につきあえる友人型であり,かつ教務力・研究力・緻密性に長けている人物・・・・・・・・・。

こうした世間の要求に1人で応えられる指導者(教師)などあり得ないからです。

理想の教師を求めながら、理想の教師たることは不可能だと気付かされるのです。

 

*作者である先生は御自身のことを

「声が大きく,明るい性格である自分自身は,父性型と友人型の指導力があって,事務力にやや不安がある」と分析しています。そこで,すべてを独力に頼らず,「母性型の指導力を持つ教師に、精神面の弱い子供の指導の援助を頼んだり,事務力の高い教師には,書類の点検作業を任せたり,分業・協働を図った。」というのです。

 

*学校も会社も『組織で対応する』と言います。

これは,一人一人が万能であることをめざすのではなく,得意不得意,向き不向きを最大限に生かすことに他ならないわけです。

多様な人材でチームをつくる,互いの弱点を補完しつつ子供の育成に努める。

『これは任せて,でもこれはお願い。』

『苦手なことで助けられたら、得意なことで返せば良い。』

と言ったことができる組織でありたいと思います。

 

*理想の組織とは,「職場で【お互い様】を築ける組織」のことであるような気がしてなりません。

「持ちつ持たれつ」子供の世界もこれと同じで,【お互い様】が大切にされる友達関係であったり,クラス環境であったりして欲しいと思います。